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『起業は山間から』・・・石見銀山に想う

梅雨の合間に、石見銀山を訪れました。

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何年ぶりだろう。

少なくとも、世界遺産(2007年)認定後では初めてなので
おそらく10年ぶりぐらいになるのかな。

以前は、雑多な観光地というイメージがあったのですが
ひさしぶりに訪れると、まず大きな違いは
クルマが走っていない。

世界遺産認定後に交通規制を実施して
観光客の車両は300m離れた「世界遺産センター」に停める形になった。
また、街並みも江戸時代を再現するかのように整備され、
どこにでもあるタイプの典型的なお土産屋さんの数が減っていた。

その結果、昔の里山に遊びに来たような雰囲気になっていたんですね。
これには、正直びっくりしました。

そして、もっとも驚いた場所が「群言堂」というお店の存在。
古民家数軒がひとつの回廊空間のようになったおしゃれな雑貨・服飾店。
オーガニック系のカフェもありました。

群言堂の中庭

群言堂の中庭



この店がかつて「ブラハウス」という名前で、そこにあったことは覚えていましたが
その頃はカントリーとナチュラル食器が並んだ不思議な店だった・・という記憶しかありませんでした。

この10年あまりに、何か起こったのか・・・。
この本が、その秘密を解き明かしてくれました。

起業は山間から


何が驚いたのか・・という点も含めて、
この「群言堂」、そのオーナーの松場夫妻がこれまで手掛けてきたことを簡単にまとめると・・・。


群言堂のおこなったこと

・廃屋となった家屋を一軒ずつ買い取って再生して店舗として使っている。
・製造する衣服類は、この石見銀山で設計し、製造も付近の人たちで行っている。
・店舗や製造などで、人口500人の過疎の村に100名もの雇用を生み出している。
・日本各地から、この会社で働きたいという若い人が移り住んでいる。

ここまで読まれて、さらに本の「起業は山間から」というタイトルを見れば
さぞかし計画的に『地域活性』や『第六次産業』的なラインを狙ってきたと思いそうですよね。

でも、この松場夫妻の辿ってきた道はそうではなく
まさに「思いのままに」自然体で、王国を築いてきた感があります。


松場夫妻の経歴

1974年 名古屋で出会い結婚
1979年 内職的に洋服をつくりはじめ、ブランド「ブラハウス」誕生。
1981年 夫の実家の石見銀山に帰郷し、片布物の製造・販売を開始。

その後はパッチーワークやカントリーのブームに乗り
「ブラハウス」が一気に拡大するも、流行のピーク直前で撤退し
ナチュラルな服飾や雑貨の製造へと転向。

本業で得た利益を石見銀山の古民家再生につぎ込み
広島で古民家が売りに出されると買い取って移築。

店舗でアート展や音楽会など開いて文化交流。

地元産にこだわった製品を開発して石見から全国へ販売・・・。

群言堂内のカフェ「コマメイモ」のメニュー。地元産の素材にこだわっている。

群言堂内のカフェ「コマメイモ」のメニュー。地元産の素材にこだわっている。



森まゆみさんによるインタビューを読むと
この夫妻の気負いのないナチュラルさと
「石見」を愛する気持ち、天性のカンの持ち主であることが
見えてきます。

世間の「波」を横目で読みながら、追従はせずに、一歩ずつ手を打つ。
ビジネルモデルを小さくじわじわと「横に」ずらしていく。
「横に」広げた活動範囲から、行けそうな分野にそこで投資する。
変化の多い時代、かつてのような垂直立ち上げのビジネスプランが
むつかしくなってきた話をあちこちで聞きます。
ぼく自身も、この10年ぐらいは、それと挌闘してきた感があります。

そんなとき、この「群言堂」の歩んできた道が参考になるのかもしれません。

 

 

最初、本のタイトルにある『起業』という言葉が内容と合わないと思っていました。
『起業』本にあるような、ビジネスプランとかの話が一切出てこないから。
松場さんのファッション感や価値観へのインタビューがほとんど。

でも、もしかして、それが著者の狙いだったのかもしれません。

セオリー本が並ぶ中に、この本が置かれることを想定した・・・。
起業で大事なことを伝えるために。

さて、そんな「石見銀山」の風景を下記のフォトギャラリーでお楽しみください。

また、行きたいな。

 

 


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