しおまち書房は、広島で編集ディレクション・文章作成を行う小さな制作事務所です。
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モノへの愛着は世界を変えるだろうか?


今、仕事用に使っている机は、
かつてダイニングテーブルに使っていたもの。

長く使っていたこともあるし、無頓着だったので
テーブルの天板には、さまざまな染みや焦げが踊っていた。
なんとかきれいにするしかない・・・。

そこで、週末ごとに、紙やすりで表面を削り、傷の多くを消し
蜜ろうを何度も重ねて擦り込んだ。
案外きれいになった。

手間はかかったけど、
ここまで自分でできるんだな・・ということに
ちょっとびっくりした。

 

実際にこの机で仕事をしはじめて、変わったことがある。

・以前のように、無造作に濡れたコップを直接置かなくなった。

・小まめに机を拭くようになった(以前よりは・・ですが)。

・そして、なんかちょっと愛着がわいてきた。なぜ?

 

そんな不思議な経験をした後日、
家具をつくられている方のお話しを訊く機会があった。

その方は、日本の各地で家具づくりの修業をされてきたという。
渡り歩いた街のなかでも、印象的だったとおっしゃったのが京都。

小さな家具修理屋さんの数が多く、一般の方がふらっと訪れて
家具の修理を頼んだり、あるいは直し方を聞いて自分で補修するという。
そして、家具を長く大切に、愛着を持って使う。

・・・お話しを聞きながら、そんな光景を想像した。

 

戦災を受けていない京都の町。
だから、古いものを大切に使う・・ということもあるだろうし
こういう、修理をしてくれる・教えてくれる店舗が長くそして各地に
存在している・・ということが、きっと大きいんだろうね。

ヨーロッパでも同じように行きつけのメンテのお店がある・・という話を
聞いたことがある。

京都のような光景は、もしかしたら昔は日本の各地にも
あったのかもしれない。

インフラの違いが環境を作り、そして「こころ」をつくる。
あるいはその逆か・・・。
「こころ」があるからインフラが整備されるのか・・・。

 

そんなことを考えながら帰路につき、
自分がメンテした机に座ってパソコンの灯をつけた。
そして気づいた。

「あ、そうか。じぶんでメンテしたから愛着が出たんだ・・・」と。

 

「モノを大切に」というスローガンがあちこちで聞かれるけれど
そう言いながらも、ぼくらはたくさん買って・捨てている。

もし、じぶんでメンテする人が増えれば、
モノへの想い、そして環境までもが変わってくるのかもしれない。

 

デスクの木目を眺めながら、そんなことを考える。

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