【コラム】みつぎの里山を歩く
みつぎの里山を歩いてきました。
最近「里山」という言葉が注目されている。
いろいろな解釈があるけれど、
簡単にいえば「人と自然が共存する環境」となるだろうか。
そして、この言葉を爆発的に広めたのは、
ベストセラーになった本『里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く』と
その本の元になったNHKの番組と言うことになるんだと思う。
すぐそばにあるものに価値を見出し、広める
「資本主義」とつくので、まるで新しい経済原理のようにもとれるけれど
この本で描かれているのは、簡単に言えば、身近にある資源や自然を使って
なるべく遠くから原油を使って運んでくるものを減らそうという考え方と
そのムーブメントの事例。
地元の木材をもっと使ったり、農産物をもっと活用して商品化したり、
山間部に住んで協力しあって、生活コストを下げたり・・・などなど。
以前であれば山間の農産物を販売することに重きが置かれていたが
それとは少しニュアンスが違う。
「今あるものに価値を見出し、広める」それが主体だ。
高度成長期以降、安い原油とそれをベースにした運輸、そして加工製品が
どんどん国内に入ってきて、国内のものよりも「安い」ということが定着した。
けれど、お気づきのように原油産国が力を持つにつれ、
それらも決して「安い」とはいえなくなってきた。
すると、もともと、資源の少ない日本はどうすべきか・・・という問いが生まれる。
子どもの頃「日本には資源がなく、輸入に頼るしかない」とずっと教わってきたぼくらは
その言葉をそのまま信じていて、「もう国内の資源はない」とずっと思ってきた。
けれど、それはあくまでも見方の問題であって、
実際には考え方ひとつで、資源はもっとあるのだ・・・と、
この本で気づくことができた。
決して、海外のモノを否定するという意味ではなくて、
「あるものは使おうよ」「目の前に素材があるんじゃないの?」という考え方。
それが「里山資本主義」であるわけだ。
まずは、知ることからはじめよう。
ぼくがその見方を知った時、まずは「知ることからはじめよう」
そして、「できることをしてみよう」と思った。
ぼくはある程度の都会で生まれ暮らしているし、そこで仕事もしていて
それを急に変えることもできそうにないけれど、
少なくとも、地元に近い場所で起る「動き」だけはしっかり見ておき
そして微力ながらそれを応援したいと思ったのだ。
そういうわけで、今年の前半は、広島県内や近県(山口、岡山、愛媛)での、
「里山」を活かす「動き」や「お店」を少しずつ回ってきた。
過疎化で捨てられそうだった山間の町や村を「資源」として見直す動きが
広島県でも、じつはじんわりと広まっている。
「みつぎさいこう」のフィールドワーク
その一つが「みつぎさいこう」というグループの動き。
尾道市御調町をベースに「まるみデパート」という店舗経営を中心にしながら
「みつぎ」の良さを「再考」して「最高」にしようという意気込みが
ネーミングに込められているようだ。
その「みつぎさいこう」さんのイベントとして
小さな谷間の里山を歩くフィールドワークに参加してきた。
かつては20軒以上の住まいがあった小さな谷間の集落。
いまでは、常時居住されているお宅は1軒のみで
あとは「通い」で農業や放牧をされている方が数軒。
ちいさな谷間のあらゆるところが、
かつての「棚田」であり、そのいくつかはすでに
田んぼではなくなっている。
廃屋も目立つ。
この場所に立ち、そして空気を吸いながら
地元の方のお話を聞いたり、棚田を歩き回る。
牛と出会い、カエルを探す。
何ていうかな、子どもの頃の「探検」に近い。
大人の遠足ともいえるかな。
もちろん、遠足につきもののお弁当もいただいた。
なんと、このフィールドワークのためにつくられたものだそう。
御調産のイノシシのお肉も使われている。
みつぎのスイーツ(煎餅&どら焼き)もおいしかった。
先人たちが積み上げてきた石組。
継承し守られてきた森の恵み。
素朴な野の花たち。
これらをゆっくりと見つめる時間は、
普段の生活でぼくらが頭を悩ましている
デジタルな悩みのいくつかを「果たしてそこまで重要なのだろうか」と
思い直させてくれる時間にもなった。
観光地のように便利でもないけれど、
人によっては心を満たされるのではないだろうか。
日本では、言葉が流行ると、その本質を飛び越えて
商業にしようとする流れが増えてしまい、本質が見逃されやすい。
派手ではないけれど、
こうやって、地道に「今あるものを再発見」「再考」する動きは
とても大切だと思う。
あとで調べると、庄原市など広島の他の地域でも
里山を歩くフィールドワークは開催されている。
この記事を読んで気になった方はぜひ参加されてみてはどうだろう。
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