しおまち書房は、広島で編集ディレクション・文章作成を行う小さな制作事務所です。
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「手しごと」の重さ、そして価値

6月に、ちょっとした用事があって東京に行きました。
日帰りでも済む用事ですが、航空券セットなら、ちょっと上乗せで泊まれるので
ついでにいろんな場所を見たいと思って、一泊二日を選びました。

 

まずは、駒場方面へ。東大のキャンパスがある場所で、このあたり自体を歩いたのも初めて。
高級な住宅と、外車ばかりの雰囲気に圧倒されました。

最初の目的地はここ、日本近代文学館
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本当の目的は、この建物に併設されるブックカフェ(ブンダン)だったのですが、
本館の展示内容が「近代文学の名作 作家の手稿」というもので、
ちょっとのぞくつもりで拝見して感動!

下記を中心とした、直筆原稿を見ることができました。

・森鷗外「舞姫」
・二葉亭四迷「平凡」
・夏目漱石「坊つちゃん」
・樋口一葉「にごりえ」
・島崎藤村「夜明け前」
・有島武郎「或る女」
・高村光太郎「レモン哀歌」
・谷崎潤一郎「痴人の愛」
・菊池寛「受難華」
・中里介山「大菩薩峠」
・芥川龍之介「蜘蛛の糸」
・宮沢賢治「銀河鉄道の夜」
・太宰治「人間失格」
・三島由紀夫「春の雪」

写真は撮れませんでしたので、同館のサイトで一部ご覧ください。

肉筆はやっぱりすごいですね。迫力ありまくりです。
また、同じ作家でも時期によって字が違ったり、何度も直した後があったりと
「産みの苦しみや重み」をすごく感じました。

パソコンになって、モノ書きもずいぶんと楽になりましたが
その反面、こういう「原稿用紙に向かい合う重さ」というか
「書きはじめたんだから、モノにしてやる」という感覚はもしかしたら
薄まったのかも・・・・。

 

さて、目的のカフェ(BUNDAN)では「文豪にちなんだメニュー」が名物で
ぼくは、村上春樹『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』の
朝食シーンを再現したメニュー「ハードボイルドワンダーランドの朝食セット」と、
寺山修二ブレンドの「アイスコーヒー」をいただきました。

ちょっと利口になった気分? その他にもいろいろ面白いメニューがありますよ。

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それにしても、このカフェに、なにげにある本棚もすごいです。
手づくり装丁時代の本がたくさん。
すばらしい! 刺激うけまくり!

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さて次に、すぐ近くの「日本民藝館」へ。
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「民藝」という言葉は、
日本国内では当たり前すぎて正当に評価されず、
西欧化・工業化の波で「消える」危惧さえあった、
日本古来の食器や工芸品を「民藝」=「民衆的美術工芸」と定義して
世に紹介して再評価した活動で、おもに柳宗悦さんを中心とした人々が推進しました。
その活動のおかげで、日本独自の食器(陶器や漆器・鉄器、染色など)が
再評価されて、残ることになりました。

この「日本民藝館」は、その活動拠点となった場所で、
今では博物館として貴重な「民藝品」を見ることができます。

あ、ここも写真不可なので、ごめんなさい^^
日本民藝館ホームページで感じてください。

ここでも、手しごと品というか、
手づくりで何百年も作られてきた「モノづくり」の文化の重さを感じました。

 
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そして、その次に訪れたのは、電車を乗り継いで、南千住の「石洞美術館」。
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ここでは、「漆器展」が開催中で、日本の「御膳文化」の素晴らしさを堪能。

そして、もうひとつ目的がありました。
それは、併設されている「ブータンの漆器」展です。

じつは古くからの知人が、この展示に関わっておられて
ぜひ、見て見たかったんです。

何でも、ブータンは「漆器」=「漆塗りの木製品」文化の最西端に位置していて
特に色鮮やかな漆器が特徴なんだそうです。
(写真は許可を得て転載しています)

ブータンの漆器

ブータンの漆器

ブータンの漆器

蓋付きの食器が多いのも特徴のようですね。

で、このブータンでは、かつての日本と同じように
西欧化や工業化の波が押し寄せ、それにあらがえなかった結果、
金属やプラスティックなどの安価な食器が市場を席巻してしまい
こういう「漆器」文化が
絶滅寸前なんだそうです。

日本では、少なくとも
お味噌汁を飲むときの「お椀」は漆器として残っていますね。
これは当たり前のようでいて、結構すごいことなのかも。
柳さんたちの「民藝」活動のおかげでもありますね。

そういうバックグランドを知り、
ブータンの漆器の存在がもっと広く知られるといいなぁと感じました。

「ブータンの漆」Facebookページもありますので、ぜひ見てください。
Bhutanese lacquer ブータンの漆 Facebook

 
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そういうわけで、この旅行では「奇しくも」
「手しごと」という共通点で、いろいろと感じることができました。

中学生の頃、ポケットコンピュータと出会って
コンピュータやデジタルのすばらしさに感動しました。
今も、インターネットの仕事も並行してやってます。

デジタルの素晴らしさ、便利さは当然のこととして思っていますが、
デジタルや効率化、大量生産化という便利な流れの一方で
「手しごと」という、ある意味でモデリングもしくは試行錯誤の時代があったこと。

そして、その価値はこれからも大切であることを、どうやら再認識する旅だったみたいです。

そんな、東京紀行の様子を、下記のフォトギャラリーでごらんください。

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