しおまち書房は、広島で編集ディレクション・文章作成を行う小さな制作事務所です。
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読後感:御馳走帳

「御馳走帖」内田百間

久々に内田百間の『御馳走帖』(昭和21年初版発行)を読んで、下記の文章が響いています。

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生まれ合わせが悪くて子供の時から年を取るまでいい目を見ずに終はる人も多いのだから、その日に食べる物がなかつたと云ふ話などは、別に珍らしい事でもないであらう。東京の様な都会に住んで、お金がなくなればその内に御飯も食べられなくなるのは当たり前である。しかしその当たり前の事が自分の身の上にめぐって来た時、これは世間に有り勝ちの事であると考へてはゐられない。特に私の様に親のお蔭で立派な学校を卒業した後、人の羨む地位を得て、人並み以上の月給を貰ってゐる途中に蹉跌しておなかがへる様になつたのは、全く自分の不徳の致すところであると天道さまにおわびをしなければならない。
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なんというか、理屈っぽくありがながら正直なところが憎めないんですよね。
ぼくは無意識にこの人に憧れていることにも気づく。

この文章からはじまる「芥子飯」というエッセイでは、手元に電車の片道運賃分しかお金がなく出かけて、途中で見たカフェの「ライスカレー」の看板が気になって、でもあれこれ迷って、結局歩いて帰ってカレーを食べるというお話で、これがまたリアルに響くんですな。

・・・こんなことを書いていたらカレーを食べたくなってきた。ちなみに「芥子飯」とは「ライスカレー」のことらしい。

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