竹田さん個展「うちゅうのはしっこを見にゆく」最新インタビュー!
今月中旬より開催される、竹田道哉さんの新作個展「うちゅうのはしっこを見にゆく」についてご本人にインタビューしました。
かなり興味深い内容になりました。ぼくもまだ作品を一部しか拝見していませんので、個展が楽しみです。
(聴き手:久保浩志 2013年1月11日)
久保:2013年になりました。昨年はいろんなことがありましたが、竹田さんにとってはどんな年でしたか?
竹田:本を執筆して、様々なことが学べたと同時に、少し注目されるようになって、転機となる一年だったように思います。久保さんをはじめとして、人との出会いもたくさんありました。
久保:テレビやラジオに出て、生活面では変化はありましたか?
竹田:生活面での変化はありません。ただ、気持ちに張りが出てきたというか、今後に向けての覚悟をすることができたように思います。
久保:今年の抱負というか方向性は、どんな風に考えてますか?
竹田:「絵」をしっかりと描いていこうと思っています。
久保:「絵」の重要性に気づいたということでしょうか?
竹田:そうですね。絵に身を預けてみようかなという感じです。僕の場合文章も重要なパートだとは思うのですが。
久保:リトルプレス「ひろしまスケッチブック」は郷土愛を表現する本だったと思うのですが、その反面で、地元だけという縛りになった気もしますよね。一緒に東京に行った時に、それが他県では馴染みにくいということをぼくも感じました。絵であれば地域を超えますよね。
竹田:たしかに、ローカル色が強すぎて、他県の方々には興味を持ってもらいにくかったかもしれません。ひろしま以外のテーマでも、僕の思い入れだけが先行した絵は、やはり認められにくいと思いますので、見てくださる方がどういうふうに感じられるかということを考えるのは重要なことだと思います。
久保:たとえば小説家の方が自分の周りで起こったことを小説にして、舞台を架空の町にすると、読み手はそれを自分に置き換えて共感するという現象が起こります。「ひろしま」と銘打った企画は、第一段階としては大事だったんですが、次は広島で考えたことを普遍的に伝える・・ということが大事なのかなぁと、昨年後半はぼくも感じました。
竹田:そうですね。広島については、作品化したいものがたくさんある。ありすぎるほどなのですが、大きな目で見て、普遍化できる素材を選択していく必要があると思います。
久保:それは「客観性」というか「第三者視点」ですよね。
竹田:そうですね。趣味として描くのなら、自分本位でも構わないのでしょうが、作品を発表する以上は、第三者の目を持たなければいけないと思います。
久保:なるほど。1月21日から新作個展が始まりますが、それは「新しい視点」で紡いだ作品ということになるのでしょうか?
竹田:「ひろしま」にこだわらずに描いた絵が中心です。ネットの動画で、宇宙に関係したものを見まして、もともと宇宙論的なことに興味を持っていましたので、それをテーマに選びました。
久保:今回のテーマは「宇宙」ということですね。宇宙論のどんなところに惹かれますか?
竹田:『わからない』、『結論がない』ということですかね。
久保:それは深い・・・。「あたらしい」ことにも予定調和を見てしまう社会への、ひとつのアンチテーゼかもしれませんね。それは楽しみです。じゃあ、個展の内容についてお聞きしたいのですが、出展は何点ぐらいの予定ですか?
竹田:20点くらいになるかと思います。絵と文章で構成する予定です。
久保:何かストーリーがあるのでしょうか?
竹田:少年と少女が「うちゅうのはしっこを見にゆく」というストーリーというか、コンセプトです。完結した物語ではなく、絵一点一点に、そのコンセプトに沿った文章を添えようと思います。詩であったり、散文であったり。これは「ひろしまスケッチブック」の手法とまったく同じかもしれませんが。その方法に可能性を感じていますので。
久保:ジュブナイル(年少者向け作品)的でお子さんにも面白いかもしれないですね。ところで「ひろしまスケッチブック」は段ボール片に描いた作品だけを集めましたが、手法的には今回は変化はありますか?
竹田:段ボール中心ですが、以前描いたものを段ボールに貼ったり、立体的なものにしたりと、僕としては実験的な試みをしてみました
久保:中心は段ボールなんですね。段ボールの会社の方に協賛いただけないかな^^ 冗談はともかく、見本で3点ほど作品をいただいているので、解説いただいてもいいですか。まずは「ぼくらは軽便汽車に乗って」。
竹田:これは、夜の広島市街地を見下ろした写真をフェイスブックにアップしたときに、宇宙に連れて行ってというコメントをくださった方がおられまして、そこからヒント得ました。宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』とかの影響もあるかもしれませんが、「ひろしまスケッチブック」で描いた軽便汽車を再登場させて、それに乗って二人の子供が宇宙に向かって行くという感じです。ちなみに、このタイトルは、コメントを書いて下さった方に許可を頂いたのです。
久保:「うちゅうのはしっこ」に少年と少女が、この汽車に乗って出発するわけですね。これ、もともと舟入の公園の遊具でしたっけ?
竹田:そうですね。舟入第一公園の遊具です。あれが空に舞い上がったらと思うと楽しくて。
久保:次の作品は「ふたり」。意味深な3コマですね。意味を解説するのは野暮かもしれませんが、これはその少年と少女?
竹田:まったく別の意図を持って描いた3枚の絵なのですが、なんとなく並べていたら、なんだかマッチするような気がして。真ん中は、本川(広島市中区)の波を描くつもりで描いたのですが、ここでは、時間の川にしてみようと思っています。
久保:「時間の川」。それは確かに宮沢賢治的ですね。最後の作品は「手のひらの中のうちゅう」。これはまた、センセーショナルな作品で・・・。最初に「ひろしまスケッチブック」Facebookページでこれだけを拝見した時、何が起こったのかと思いました(笑)
竹田:これは、一昨年の暮れ、会社を辞めたあとで描いたのです。もっと色の薄い絵でしたが、ボール紙に貼り付けて、クレパスで力強く塗りこんでみました。宇宙は、大きな者の手のひらの中にあり、僕らの手のひらの中にも宇宙があるという、入れ子型の宇宙論を思いながら描きました。
久保:入れ子、マトリョーシカ、ループ、鏡の世界・・・。いろんな解釈ができますね。なるほどなるほど。今回の個展は「ひろしまスケッチブック」とは違う、もっとこころの根底にある作品といえそうですね。
竹田:最初のほうで語った第三者的視点の必要性とは矛盾しますが、極私論的な宇宙観をポエジーを持って表現できればと思っています。
久保:今回は時間がなくて、ぼくもまだ全作品を拝見していませんが、今作は絵本になりそうなジュブナイル性を感じます。こういう世界観は、児童文学作家だったお母さん(竹田まゆみさん)の影響を受けているのでしょうか?
竹田:たしかに、母について児童文学を勉強はしていましたが、どうも僕自身が経験が足らず大人になりきれていないので、そういう感じの表現を目指してしまうということだと思いますが。
久保:永遠の少年性・・・。それは竹田さんの持ち味かもしれませんね。ところで、会場の「ハミングバードカフェ」はどんな場所ですか?
竹田:舟入の住宅街の一角にある瀟洒な邸宅といった感じです。ドアを開けて入ったら、カウンターがあり、その奥には椅子とテーブルや棚があり、まわりの壁面に絵を飾ることができるといったスペースです。
久保:まだうかがっていないので、この機会におうかがいしようと思います。個展の仕上がりが楽しみです。追い込み中のお忙しいなか、インタビューさせていただいてありがとうございました。最後に、企業向けの仕事なども、今年はしていきたいと以前におっしゃっていましたが、それは今でも思っていますか?
竹田:どんどん企業にアピールしていきたいです。個人でも、公共団体でも。
久保:どんな要望に応えたいですか?
竹田:広報誌の挿絵とか、包装紙のデザインとか、イラスト+ライターとして活動していければと。
久保:なるほど。そのためにも、まずは個展で多くの方に作品を観ていただけるとうれしいですね。今日は夜遅く(現在23:26です)までお疲れ様でした。最後に閲覧いただいている皆さまにメッセージをどうぞ。
竹田:どうもありがとうございました。まだまだ拙い腕ではありますが、心をこめて作品作りに励もうと思っています。今後もよろしくお願い致します。
久保:心をこめて・・・大事ですね。竹田さん、本日はどうもありがとうございました。閲覧頂いている皆さま、個展の詳細は下記をご参照くださいね。
1月21日(月)~26日(土)
入場無料
場所 HummingBird Cafe
広島市中区舟入幸町11-2
営業時間 10:30~19:00
店休み日 日曜日・他不定休
TEL/FAX 082-295-7743
http://hummingbird-cafe.sakura.ne.jp/
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