【コラム】ブックトーク【4ページの美学~少部数出版の可能性】ご参加ありがとうございました。
2015年4月18日、「古本交差点」で開催される最後のイベントとして
しおまち書房を題材に取り上げていただきました。
「古本交差点」は5月末をもって第一期の活動を終了されます。
詳しくは「古本交差点」のサイトを参照ください。
思えば、2013年に独立してすぐ、「古本交差点」のオープニングイベントの一つとして
ワークショップをさせていただき、そこから即興的に『ヒロシマモナムール』という
リトルプレスが生まれたのが2年前。
自分の作品が本になる喜びを、より多くの方に感じて欲しい・・
そんな純粋な想いと、「身の回りにある平和をもっと大切に考えよう」
という気持ちから生まれた本でした。
まあ、本の完成度は、今考えるとちょっとね・・だったんですけど、
でも、あそこでリトルプレスを出せたことは
自分にとっても大きな糧になったと思います。
今だから言える話ですが、当時全国の販売店舗様にお送りしたんですが、
95%のお店にお断りいただいて、
しばらく落ち込んだ・・ということもありましたが
今ではすっかり元気です^^
イベントの準備をしながら、
そんな、悲喜こもごもな思い出が走馬灯のように駆け抜けました。
まさか、色々な思い出のつまった「古本交差点」、
その最後のイベントに、自分ごときが取り上げていただけるとは
それこそ2年前には考えもしませんでした。
本当にありがたく思います。
さて、ブックトーク【4ページの美学~少部数出版の可能性】ですが
しゃべりが下手なぼくを、
しっかりと財津さん(本分社・古本交差点代表)がアテンドしてくださり
なんとかイベントになったみたいでした。
きっと一人だと、何かの罠に足をとられ、抵抗できぬまま壁に激突していたでしょう。
ありがたや、ありがたや・・です。
トークイベントの内容をちょっとだけご紹介します
お話ししたテーマは題名のとおり、少部数出版の可能性について。
リトルプレスやzineがどんな役割を持つかでした。
ここでは、参加できなかった・・という皆さまに向け、
ちょっとだけ内容を振り返ってご紹介してみます。
まず、ぼくが書籍編集からホームページ制作の仕事に移行し、
結果として、「ネット」と「本」の制作を今でも続けていることについて
その二つがどう違うのか、なぜ両方を手がけるのかという質問でした。
ネットと本はどう違う?
それについては、以下の図で説明します。
印刷物は、必ず4ページ単位で構成します。しかもページ数が増えるとコストもかかりますので、
限られたページ数の中に、素材を加工し、絞り込んで流れをつくるという「編集」が欠かせません。
読者も、編集者の意図した順序にページを読むことで、同じ価値観を受け取りやすくなります。
一方で、ネット(ホームページ)ですが、下記のようになります。
インターネットは、トップページから順番に読まれることはありません。
読者は検索エンジンを通って、読みたい記事だけをピックアップします。
また、ページ数の制限も本よりは少ないので、
素材があればあるほどページ数が増える傾向があります。
それゆえに、作業量も多くなるので、一つひとつの素材を磨いたりすることよりも
できるだけ多くの情報を格納する「アーカイブ」としての性能が重要視されます。
このふたつ、どっちがいいとかではなく、それぞれ役割の違うもの・・・とぼくはとらえています。
そして、発信するコンテンツに合わせて「本」を選んだり、「ネット」で公開すべきと思うのです。
なぜ、小部数出版に意味があるか?
さて、そういうネット制作を経験したぼくが、今なぜ「少部数出版」に注目したのか?
それは、東京や大阪、岡山や香川、そしてニューヨークなどで、
「リトルプレス・zine」のブームを目にしたことがきっかけでした。
「リトルプレス・zine」を簡単に説明すると
取次(本を降ろす会社)を通さない代わりに
低コストで印刷したり、手作りで本をつくって、自分たちで販売するというもの。
なぜ、この「リトルプレス・zine」という「少部数出版」が静かなブームなのか、
その理由は、音楽の分野での動きとの比較で、少し見えてきます。
変化の多い音楽の世界では、プロといえども、
継続して音源を発表できるとは限らない状況になってきました。
その昔は、「一枚レコードを出せば、プロとしてずっと活動できる」時代もありましたが
今や、そういう「一発逆転」が起こりにくくなり、
むしろ「継続して活動する」ことが重要になります。
ぼくは自分自身の活動指針にもこの言葉を置いていますが、
今では、そう簡単に「一発逆転は起こらない」
・・と思っています。
もしそれが起こっても、継続できる体力が元々なければ続かない・・と思います。
また、別の収入元を持ちながら活動するという選択肢も重要になっています。
したがって、ベストセラー本の題材モデルになった
「グレートフルデッド」の例(下記)を持ち出すまでもなく、
路上やイベントでのライブ活動や、動画サイトへの投稿などが、
自分を表現する活動の主流になってきたのです。
「路上ライブ=リトルプレス・zine」
では、音楽ではない、本という媒体に向いた、
文章、イラスト、写真、編集などを発表したい人は
どうすればいいか・・・。
詳しくはこの図を見ていただくとわかりますが
音楽における「路上ライブ」に近い存在が、「少部数出版」であるということです。
文章、イラスト、写真、編集などの発表は、インターネット上でも可能ですが、
最初に「本」と「ネット」の比較で説明したように、
インターネットでは、ストーリーや流れを読み取っていただきにくく、
また、あまりにもたくさんのサイトが存在するために、特別感が減っている・・と思います。
この図のように、「編集」というワザを加えることで、「本」として制作して
ネットで告知し、店舗やネットで販売する・・・。
そういう流れにあると思うのです。
音楽にしろ、お笑いにしろ、
「ブーム」でたくさんの人が出てきた後は、優秀な存在が残ります。
どんな文化も、裾野があってこそ。
「分母があるから、分子が生まれる」とも言います。
売れる本でなくてもいい、裾野としての本がもっと広がれば
文化ももっと高まる・・・そう考えているのです。
したがって、あまり高額ではないコストで、少量の「本」を制作する、
広島でそれを手がけよう、地元の才能を応援しよう、というのが
「しおまち書房」の「少部数出版」に対するコンセプトです。
ざっと、説明しましたが、こんな感じのことを話させていただきました。
上記の図は後から修正したのですが、
「小部数出版」=「路上ライブ」という言葉は、財津さんの指摘でした。
その言葉が出てきたとき、
ずっと「うまく説明できないなぁ、自分のしてること」というモヤモヤが
一気に晴れていったことを思い出します。
そういう意味でも
刺激的なセッションであったと思います。
会場では、国内各地や海外から集めてきた
リトルプレス・zineを一部展示させていただき、
広島では、あまり知られていないということもあり、
熱心にご覧になる方が多かったのも印象的でした。
ともあれ、儲けをメインに考えるのではなく、小さく細々と、
「表現したい」皆さまのお手伝いをしていきたいと、ぼくは考えています。
どうぞ、こんな「しおまち書房」を見守っていただければ幸いです。
●追伸・・・1
なお、当日は予定していながら、話の流れで言及できませんでしたが、
本分社(古本交差点)の財津さんも
大学生2名が発起人となって、
海外へ旅した時の想いをまとめたリトルプレス
「テヲツナグ」を発行されています。
あ、もちろん「しおまち書房」の書籍も下記のネットで販売していますので
ぜひ見るだけでもしてやってください。
よろしくお願いします!
しおまち書房 ネット販売部
↑しおまち書房で発行する書籍の通販サイトです。
●追伸・・・2
2013年の頃は、リトルプレスやzineを「自費出版」の一部という言い方をしていたのですが
一部の書店へ流通を行う、商業としての「自費出版」とはちょっと意味合いが違うため
最近は、「少部数出版」「自主制作書籍」「自主流通本」などと言うようにしています。
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